金冠の再使用

ずっと以前に金冠を乗せた歯が、痛くなったことがあった。別の歯科医に行ったら、数万円も請求されて、古い金冠の治療後に返してくれた、といった経験を持つ人は多い。再利用してもらえたらもう少し安く済むのにとも感じることがある。

金冠が高いのは、貴金属である金を使用するからだと思いこんでいる人が多いのが事実である。しかし、これは誤りである。実は、材料費は想像以上に安い。金冠は、大抵の場合が自費診療となるが、料金のほとんどは、金冠の製造費と、歯にかぶせる技術料となっている。戦前において、まだ「技術料」の考え方がなかったころ、歯科医は「金を使用するから」というと、患者が納得してもらえるので、高い治療費を請求できるため、すこしでも多く技術料を取っていた。そのしわ寄せがいま、「金冠を再使用してほしい」という患者の要望として現れている。歯科医者たちに聞いてみた事情を一言でいうと、おおよぞ以上のようになる。実際に、金の値段はどの程度か。一例を挙げると、たいへん重い部類に入る金冠でも、五号程度である。無理やりに再使用してみても、たいして安くはならないのが実情だ。この金額と材料費用の差が、歯科医たちが活発にPRしない理由は、「なんだ、そんなに儲けているのか」と勘違いされるのが困るからだ、とある歯科医から話を聞いた。技術料、人件費、設備償却費、光熱費等があるため、「金の代金以外の残りは、すべて儲けになる

のではないが、実際は儲けになるのだと受け取られてしまう、という。ところで、金の再利用は、技術的に難しいのか。同じ歯医者が作った金冠なら、成分がわかっているため、できるという。しかし、他の歯科医者が作成した金冠では、組成が分からないため、再利用はやや不安という歯科医が多い。金冠と一口にいっても、どのような金属をどの程度混ぜ合わせているかが、見た目だけでは判断ができない。もし、再利用するのならば、一度精錬し直して純金に戻して、再び最適な合金となるようにつくり直さねばならない、と多くの歯科医は言う。これでは、手間もコストも必要となってしまう。

健康保険で金銀パラジウム(金パラ)冠をつくる場合、患者さんからの了承が得られれば、金パラ冠の材料に加えて、 取り外した金冠を溶かして使用できる。金パラの金の比率が上昇するため、加工が容易になって、冠がしっかりと適合してくれる、と言う健保の歯科医がいる。よい方法だと思われるが、厳密に解釈すると違法行為に相当するという解釈もあって、されに面倒くさいために、やれる歯科医はごく少数だ。これをやってもらえたら、とてもよい歯科医といえるだろう。しかし、他の歯科医から訴えられたら、面倒なことになりかねないともいう。