金冠はどこまで歯によいか

貴金属である金(ゴールド)は、歯の修復用途に用いられる材料として、最適であるといわれる。しかし、値段が高い。前歯上下で各六本の場合、健康保険が効くこともあるが、たいていは自費となってしまう。さらに、歯科医によっては、金を使用する理由の説明が、 全く異なる。「金パラでも、効果がほとんど違いません」から「金が一番ですね」まで。実際のところ、どの程度金は歯とってよいのか。高価であるだけの価値は、実感できるのか。

はっきりとした調査結果は無いのだが、取材をした一般的な印象では、治療の優劣にもっとも影響を与えるのは、歯科医の腕前が重要である。金か、金でないかの程度は、歯科医の腕前に比べた場合、かなり影響が小さい。少なくとも、健康保険でできる金パラ(金銀パラジウム合金)の冠だと、数カ月経つとだめになり、金冠なら三十年メンテナンスがいらないといったような大きな差はない、と考えられると思う。その歯科医の腕前が、特上(名医)、 上位、中位または下位のどのクラスか、という検討をしないで「金冠か否か」の議論を行うことは意味がない。

歯の修復は、心身の健康のためである。昔は、金歯は社会的地位のシンボルであった。しかし現在はもう「キラリと見せる金の八重歯」が、金持ちの一家のお嬢様のシンボルとして尊重される時代では無くなった。そうであれば、金を使用するか、金パラ(健康保険)ですませるかは、歯の健康面だけから論じれば十分であろう。金冠がよいとされる大きな理由は、よく延ばせるから、冠の縁と歯がぴったりに作成しやすいことだろう。このためには一般的に、まず鋳造冠であって、無縫圧延冠ではない、ということ。そして、二次う蝕を発生させるすき間が、冠縁に無いこと。それが大前提となる。すき間は患者でもある程度調査が可能であるが、十分正確に判断することは不可能だから、ある程度は、歯科医に任せる必要がある。そのために、患者の「歯の健康」に対して、その歯科医がどの程度熱意を持って取り組みかを読みとるべきだ。それを基にして、患者としては、その歯科医が勧める金が、問題となっている歯にどの程度重要かを判断できると思う。 金冠かどうかは関係なく、「あなたの歯は、実際にこのようなわけで、歯垢が留まりやすく、虫歯になりやすい。したがって、このようにブラシを当て、このように手を動かしてください等、虫歯になってしまった歯の原因物質の除去を、熱心に指導してくれた結果、以後気をつけようという気持ちになれたら、その歯科医は、自分の歯を大切にするうえで、重要な先生ということになろう。その歯科医が、あなたの歯ぐきのこの部分が、このような具合になってしまっていますね。だから虫歯になりやすいのが理解できるでしょう。冠縁を正確にぴったりとなるように仕上げておかないと、後々心配になることがあります、等と説明する。その話を聞いて「なるほど」と納得できたら、自然に、冠縁が正確に仕上げられた金冠を入れてみたいと思うに違いない。